2010年10月16日
洛南の聖地めぐりはいかが 海住山寺 岩船寺 浄瑠璃寺

浄瑠璃寺発行の絵葉書より
木津川は、古代から流通の拠点でした。
「みかの原 わきて流るる いずみ川 いつ見きとてか 恋しかるらむ」、泉川とは木津川の古い名です。百人一首に歌われたこの「みかのはら」を一望におさめる小高い山の中腹に海住山寺は創建されました。
恭仁京造営の六年前(天平7年・735年)、聖武天皇が奈良の大仏を建立しようとしていた頃、王城の鬼門に伽藍を建てれば、大願成就するとのお告げが起源といわれます。当時は藤尾山観音寺といいましたが、その後焼失、復興した解脱上人貞慶によって補陀洛山・海住山寺とされました。
真っ先に目に飛び込んでくる五重塔は鎌倉時代の建立。繊細な木組みを見せるやさしげな塔、もこしをつけた初重の内陣は厨子のようなめずらしい造りとなっています。 内部には、仏舎利を安置する塔と四方を守る四天王が安置されています。

老木が生い茂る山寺の雰囲気のこの寺、山中にあっても海住山寺と名ずけられたのは、大海にある観音浄土・補陀洛(ふだらく)に因んだもの。本堂の厨子は秘仏・十一面観音 ゆったりとしたおおらかなは、平安初期のものでめずらしい。
岩船寺
創立は天平元年(729)、聖武天皇の発願により、行基菩薩によって建立されました。その後、空海と智泉上人阿弥陀堂においてが伝法灌頂を修したといわれています。

本尊の阿弥陀如来坐像(重文)は平安時代なかばのもので、けやきの一木造。定印を結び、阿弥陀信仰が盛んになる以前の様式でめずらしい。鎌倉時代の四天王立像が脇侍を固めています。
池には、鎌倉時代の特徴である十三重の石塔があります。室町時代の建立の三重塔は、整った木組み、自然と調和し、紅葉とのコントラストが素敵です。垂木を支える、ユニークにも感じる天邪鬼(重文)が四隅を守ります。あまのじゃくの語源でもあります。

この地域は、850年前、平城京の大寺の僧たちが修行のために数多く訪れ創建された山寺が多い。山を隔てたらすぐ奈良の街に至るところです。
この当尾の丘陵は石仏の里、いたるところに石仏があります。平城の人々からは僧侶たちの修行の地。平安の都人からは聖地とされたところなのです。

浄瑠璃寺
傍らの馬酔木(あしび)より低いくらいの慎ましやかな山門(堀たつお)をくぐると見事な庭園が広がっています。
この寺は、東の薬師仏をまつる三重塔、中央宝池、西の九体阿弥陀堂から成ります。
浄瑠璃とは瑠璃のように澄み切った世界、この世の東にある浄土を言います。
清らかな浄土を表現した池の東に三重塔(国宝・藤原時代、塔自体は平安末期に京の一条大宮から移されてきました。初重には、本尊・薬師如来(秘仏)が安置されています。薬師如来は、東方浄土の教主で、過去の世界から現実の苦悩を救い、生きる力を授けてくれる仏。衆生(人々)を目標の西方浄土へ送り出してくれる遣送の如来です。
右手は、人の恐れを取り除く優しさに満ちた施無為の印を結び、左手には、生きる苦しみを救う薬の壷を持っておられます。

浄土の池である中央宝池の西側に池を挟んで、九体阿弥陀堂(国宝・藤原時代)のなだらかな屋根が伺えます。横長の純和風の建築は平安期のもので、現存する唯一のもの。
太陽の沈む西方浄土へ迎えてくれる阿弥陀仏を西へ向かって拝めるように東向きにし、浄土の池の対岸から彼岸に来迎仏を拝ませるようにしたもの。今でも、薬師の前から池越しに午後の太陽の軌道を見ていると、春分、秋分の日(お彼岸の中日)には中尊の後方に沈んでいくのが分かるといいます。
柱と柱の間にそれぞれ一体ずつ、まるで部屋に住んでいるかのように阿弥陀仏が安置され、前には一体に一つずつ板扉がつけられています。

阿弥陀仏は西方未来の理想郷である楽土へ迎えてくれる来迎仏です。その九体の阿弥陀如来(国宝・藤原時代)は、人間の努力や心がけなど、生前の行いによって九品往生、下品下生(げぼんげしょう)から始まり、上品上生(じょうぽんじょうしょう)まで、九つの往生を約束する仏たち。
平安時代 飢饉や天災に悩まされ、末法の世を恐れ慄いた人々が、九つのうち、どの段階で没しても、いずれかの阿弥陀仏に救われることを願い、九体仏を盛んに作ったといわれます。ほとんど残っていない中で、今では大変貴重なものです。
中尊は、高さ2メートル30cm余、丈六の阿弥陀と呼ばれる。人々を浄土に迎えようとする来迎印。衆生を極楽へ誘う優しさ表しています。
中尊の左右に半丈六の阿弥陀が四対づつ、浄土で瞑想する定印を結んでいます。一つ一つ表情が異なる。平安の人々がすがる様子が思い浮かぶようでもあります。
この寺の庭園は、過去(東方浄土・薬師如来)の世界から煩悩の河である現世(釈迦如来)を越えて、彼岸にある未来(阿弥陀如来)の世界までを表現。暗黒無物の末法の世に一筋の望みを仏に頼んだ切実な願いが込められているのです。
その他にも、秘仏(年一回の特別公開)吉祥天女像(重文・鎌倉時代)、大日如来像(秘仏・鎌倉時代)、四天王像(国宝・藤原時代)、不動明王三尊(重文・藤原時代)など見ごたえのある貴重な文化財が目白押しです。
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Posted by 篠田ほつう at 13:51│Comments(0)
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